西条は、江戸時代、旧山陽道の宿場町として栄えていました。
その当時は宿場町とその近郊で飲まれるお酒を1軒の蔵元が醸していました。
西条近隣は現在でも広島県内で有数の穀倉地帯です。鉄道が開通する以前は海運が物流の中心でした。
山陽本線が広島まで開通して物流が大きく変わりました。
明治時代に入り山陽本線が開通するにあたり、西条の礎を築いた蔵元が近隣で収穫される米を使って地場産業として酒造りを拡大・創業・発展させ、現在まで地場産業として続いています。
あわせて、西条に本社を構える世界的に有名な精米機メーカーの佐竹製作所創業者「佐竹利一」が発明した精米機での酒造米精米技術、東広島市安芸津町出身で軟水醸造法を創案し広島酒発展の基礎を築いた「吟醸酒の父・三浦仙三郎」の酒造技術、広島県醸造試験場初代場長「橋爪陽」の現場指導技術、酒米の研究を行う広島県農業試験所など、当時の酒造りの最先端技術が西条に集積されました。
そのため西条が酒の街として発展し、現在まで地場産業として続いています。
また、蔵元の技術革新の結果、西条酒の品質は全国的に知られ鉄道を使って遠方まで出荷され、西条は酒の町として大きく発展しました。
今も灘、伏見とならぶ酒蔵が集積する町、日本で唯一の酒造研究機関「酒類総合研究所」もあります。
新しい時代も酒の街として全国に知られています。
昭和初期ごろの蔵元を現在の地図上記載
現在の様子。西条駅を中心に東西1kmの範囲に7つの蔵元が集積。
西条の酒蔵地区の仕込み水は西条の北側の龍王山に降った雨や雪が15年以上の歳月をかけて酒蔵地区に酒造りに最適なミネラル分を含んだ仕込み水として湧き出ます。
その水はお水研究で全国的に有名な広島国際学院大学「故・佐々木健博士」も解明できないぐらい不思議な水です。
龍王山で湧き出る水は軟水(硬度20)ですが、地中をゆっくりと通る間に中硬水(硬度70〜100)になるとのことです。
広い西条で西条駅前に酒蔵が集中しているのは、酒蔵地区のみに酒造りに適した伏流水が湧き出るため全国にも珍しい酒蔵地区を形成しています。
西條鶴では脈々と湧き続ける名水“天保井水”を酒造りの工程全てに使っています。
広島の仕込み水は全国的に軟水として知られています。軟水の地域は沿岸部(海側)が多いです。
西条の仕込み水は、飲んでも美味しく、酒造りに適し、美味しいお酒の出来る中硬水といわれています。
昔から西条周辺地域は広島県有数の穀倉地帯です。西條鶴では創業より地域で収穫される酒造米を中心に使い酒造りを行っています。
平成元年より「地元の米、地元の水で酒を仕込もう!!」という呼びかけのもと、東広島・西条の酒蔵地区の北約10kmに広がる標高約350mで自然条件に恵まれた稲作が盛んな地域・造賀地区の稲作農家と西条の蔵元6社が協力して東広島酒米推進協議会を結成し山田錦を栽培しました。
西条の蔵元の水源になっている西条地区の北に位置する龍王山に降った雨や雪が南側の酒蔵地区に湧き出て仕込み水となり、北側の造賀地区に湧き出て山田錦など米を育む水となります。
西條鶴では造賀地区の農家の皆様に心を込めて作っていただいた山田錦、中生新千本(なかてしんせんぼん)を中心に、最優良産地である岡山赤磐市赤坂地区の拘り生産者「赤坂特産雄町米研究会」の皆様が育てた幻の酒米・「赤磐雄町米」はじめ兵庫県滝野地区産愛山等など拘りの酒造米を酒造りに使用しています。
多くの酒蔵では、酒造期になると農家の方々が蔵人として働き、春から秋までは米造り、秋から春は蔵人として酒造りに携わっていました。
西條鶴でも平成17年までは周辺農家の人たちが杜氏、蔵人として蔵に来て酒造りに携わっていました。
西條鶴では平成18年の酒造りから杜氏・宮地充宣(みやじ みつよし)を中心とした社員での酒造りに移行。蔵元自ら冬場には酒造りに入ります。
工程ごとに分業するのではなく、全員で酒造りを行うのが特徴です。
醸造から出荷まで1年間通じて杜氏が品質管理責任者と力を合わせ皆様に美味しいお酒を味わっていただけるよう日々目を光らせて品質管理、出荷管理を行っています。
広島は山が多く、軟水地域のため、柔らかな水が生み出す旨味のある調味料(みそ、しょうゆ、お酢)、海や山の幸と相性のよいお米の旨味が広がる旨口のお酒が多い地域です。
以前は旨味を甘味と表現され『広島のお酒は甘口』と言われていました。
しかし、旨味と甘味は違います。
美味しいお米をよく噛むと、口の中に広がる味。
これが旨味で『日本人の原点』と思います。
旨味と甘味は異なり、旨味とは甘味、酸味、辛味、苦味、淡味(たんみ)といった幅広い味の世界を表現した言葉です。
西條鶴では常に広島風土の食材に合う旨味のあるお酒をイメージしています。
Classicな広島の味わいを大切にしながら、現代の味わいModernを融合させ、広島のソウルフードお好み焼きをはじめ、瀬戸内の魚貝類など、広島の豊かな食材とあわせて美味しく召し上がれるお酒を醸して行くことを目標として日々精進、酒造りに励んでいます。